客にディレクションをさせるな(人のセックスを笑うなの発音で)
永作博美は悪女が似合う(見てません)
概要
- Webディレクション Advent Calendar 2015 - Adventar の12/24の記事です。
- ディレクションとは進むべき道を指し示すこと
- 「Webディレクターに必要なスキル」じゃない。決断するために必要なことだ
- 受託はいいよね。お金の使い方を決断しなくて良いから
- イケてる進行管理さんがいれば、Webディレクターって不要では?
- だからこそ「俺がこのプロジェクトにいる意味」を模索していこうぜ
そもそも、ディレクションってなんだ?
みんな色んな思いがあると思いますが…迷ったときは、語源に立ち戻ろう。
ディレクションは「ディレクト(direct)」という動詞が元で、語源はラテン語の「まっすぐにする」という意味の言葉の名詞型です。その意味から、「目指す方向」、「目標達成への指揮」などの意味になります。
「目標達成のための指揮」って、要素分解していくと、目標のために何を大事にして何を諦めるか決断することかなと思ってます。もう少し分解すると、以下の2つ。
- 取捨選択や優先順位付けをすること
- その優先順位でプロジェクトを推進すると決断すること
Webかどうかはさておき、「ディレクター」って肩書を持っていて、判断、決断をしないのは機能を果たしていないだろうという認識。その観点では、進行管理しかできないディレクターはいらないですよね。
Webディレクションに必要なスキルとは?
じゃあ、Webディレクターに必要なスキルとか知識って何なのさ?って考えると、逆説的に「判断、決断に必要なこと全部」になるのかなと思うのです。
スケジュール内で状況が変化する中、どうやって円滑に無駄なく工程を組み立てるかだったり、限られた画面エリア内にどの要素を配置して、どの要素を取り下げるのかだったり、対象としている閲覧者がどんな人で何を望んでいるか、根拠のある仮説を立てて、それを拠り所にしていくかだったり。
つまり、進行管理も、制作に関する知識も、IAも、UXデザインも、「優先順位付けと意思決定のために必要」であって、「Webディレクターに必要」ではないのではないかなと。どれも大事だけれども、決断をするのに必要な分の知識があれば十分。
この「決断をするのに必要な情報量」が、受託か事業者かだったり、サイトの特性だったりによって大きく違うのが、「Webディレクターとは」ってトピックが混乱を招く元なのかなと。
軽くググっただけども、合計51個のスキルを身につけないとダメらしいですよ。僕たち(悪意に満ち溢れた集計方法)。
- 2015年 Webディレクターに必須な11個のスキルまとめ | Web担当者Forum
- ASCII.jp:新米Webディレクターが身につけたい7つのスキル
- Webディレクターのスキル|プロになる為に身につけたい17の能力
- デキるWebディレクターに共通する4つのスキル | Webディレクターズマニュアル
- Webディレクターがスキルアップする為に必要な12の能力 | ジーニアスブログ
そもそも、その51個のスキルにどうやって優先順位つけるのかってのが、ディレクションの第一歩なんじゃないかなと。
逆に言うと、どんなに制作のスキルがあっても、どんなにマーケティングの知識があっても、今、目の前にある問題に対して、何を大事にして何を切り捨てるか、意志を持って決断できなければ、ディレクターって名乗っちゃいけないんじゃないですかね。
客にディレクションをさせるな
ここから、受託のWebディレクター向け。
よく「客に振り回される」的な愚痴をこぼす人がいますが、それは受託側のWebディレクターが機能してないってことだと思うのです。発注者の立場に立って、同じ目線で優先順位付けと取捨選択の決断ができていないから「振り回される」と感じるのではないかと。
受発注関係だと、受託側は決断しなくてもよいけど、発注側はどんなにわからないことでも決断しなけらばならないですからね。決断するために必要な情報のインプットも手伝っていないで「発注者の決断がおかしい」って、ディレクターを名乗る人が言っちゃいけない。
永作博美は(以下略)。DVD版もどうぞ。
「そんなこと客は望んでいない」と思うあなたに
こういうお話、「お客さんに対して失礼」「そんな事したら仕事切られる」みたいに思う方って、けっこういるのかなぁという想定で。
むしろ「どうしたらいいと思う?」「一緒に考えてくれ」ってお客様からの要望、凄い増えている印象ですし、委託先への不満も「言ったことはやってくれるんですが…」って声が多数を占めている印象です(あくまで僕の観測範囲ですが)。そして、ここで提示しているようなディレクションを要望していただける場合のほうが、プロジェクトも進めやすい上に、予算も比較的潤沢なことが多いです。
あなたが今がんばってるお仕事が、世の中のすべてじゃないかもしれないですよ。
進行管理の重要性またはWebディレクター不要論
ディレクションの重要性や難しさと、Webディレクターの必要性は、またちょっと違う。
単純に、Webサイトを作るだけであれば、デザイナー、コーダーと、規模に応じて窓口&進行管理担当がいれば、それなりの品質のものが作れると思うんですよね。そこで求められるもののは適切な工程管理であって、判断ではないかと。もちろん様々な要因でイレギュラーな判断が求められることはありますが、そこを発注者で担保できればいいわけだし、そこで費用面で折り合わなくなったら、営業や経営レイヤーの判断が入ればいいわけで。
「進行管理しかできないWebディレクターはいらない」じゃなくて、Webディレクター自体が、本当は必要なかったかもしれない。
一方で、進行管理って難易度の高い専門スキルだと思っています。一昔前のWeb制作の分業化が進んでいたころと違い、いろいろな要素を並行して検討、実行しないといけないので、ただスケジュールとにらめっこしてればいいってわけではないかと。
例えばアニメの制作現場のように、ディレクターと進行管理を明示的に分けることで進行管理の専門性が向上し、業界全体の底上げにつながる可能性を感じていたりしますが、これは別の物語。
- 作者: ミヒャエル・エンデ,上田真而子,佐藤真理子,Michael Ende
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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- メディア: 単行本
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いつかまた、別のときにはなすことにしよう(読んでません)
Webディレクターの要否じゃない、俺の要否だ
だからこそ、僕たちWebディレクターは「自分がプロジェクトに提供できる価値」を強く意識する必要があると思ってます。「俺がいなくても納品は出来るけど、俺がいることで成果物やプロジェクトの品質、顧客満足度を上げられる」って自信と自負を持って、堂々とWebディレクターの稼働工数を見積り項目に計上していきましょう。
決断する勘所と覚悟なんて、書籍やセミナーで身につくものじゃないから、僕たち一人ひとりが自分の商品価値と存在意義を向上させて、Webディレクターの重要性やそこで必要とされることを普及啓蒙していくことで、業界全体の底上げができればいいなと思います。
「Webディレクター」という肩書きの妥当性
といいつつ、個人的にはいままでWebディレクターって名乗ったことないし、これからも名乗るつもりなかったりします。だって、中途半端なんだもん。
もちろん、覚悟を持ってWebディレクターを名乗っている凄腕がいるのは知っているし尊敬もしています(名村さんとか、徳永くんとか)。
でも、ここまでお話のように、ディレクションしてないWebディレクターが増えすぎちゃって、世間の認識が「窓口担当」になっちゃてる気がしているのです。
Webディレクターに対する世間の目
「裁量権があるようでない」って言われてる時点でディレクターじゃないよね…と思いつつも、皆様、どうかご自愛ください。そしてちゃんとディレクションして、自分の時間と市場の評価を獲得しましょう。